さらさらと、降り積もる雪。

それに負けない綺麗な白銀が完成した。

なんだか・・・・・・

一人で見るのはもったいないくらい綺麗だと思った。





White Garden




明日、オーブの新しい衛星都市のひとつとなった『アセイレート』が開発されて丁度1年の記念祭が行われる。
そのメインイベントとして巨大なクリスマスツリーを街の広場に作るように依頼されたのが俺たちジャンク屋だった。



「それにしてもでっかいのが出来たねぇロウ。」


のん気に俺の居るツリーの枝より2段ほど低いところに居る樹里が担当の電飾を飾りつけながら話し掛けてきた。


「まぁ、めでたいことに明日のクリスマスイブがこの都市の1周年になるんだぜ?
そりゃ、立派な奴作ってやりたいだろ。」
「それはそうですけどイブはもう明日ですよ、間に合うんですか?」
「あぁ、ギリギリ今日中に間に合うだろ。樹里はあとその電球を全部付け終えたらあがって良いぜ。
リーアムも明日の打ち合わせが都市長とあるんだろ?もうこっちは俺一人で何とかなるから行ってこいよ」
「え、えぇまぁ。そうですけど・・・大丈夫ですか?」
「まかせとけって、あとはレッドに乗って頂上の星をつけるだけだろ。
それより早く行けよ、段取りが狂ってツリーの魅力が半減したら最悪だぜ?」



ロウは笑いながら8を抱えてレッドフレームの中に乗り込む準備を始める。
それを見たリーアムと樹里は苦笑しながら自分の担当を終わらせると先にあがっていった。





レッドフレームの中で時計を見ると12/24まであと1時間を切っていた。

「もう、こんな時間か・・・・」


さすがに、あいつはもう来ないだろうな。


















数時間前にあったアイツとの通信。


「なァ、劾。お前今隣の星に居るんだろ。俺、今スッゴイもん作ってんだけど、クリスマスだし見にこないか?」

俺の開発した衛星を中継地点として飛ばす映像電話の劾の映っている画面に俺は身を乗り出した。
護衛の仕事で行ってるんだから無理な確立の方が多いけど、ほんの少しだけ淡い期待をもって俺は聞いてみる。


「・・・・・・そう、だな」


すると、画面の中の劾はちょっと微妙な表情をしていた。
それを見ただけで俺は何となく無理なんだろうなって判った。
傭兵の仕事はいつ何が起きるかわからないから、クライアントの傍を離れるのは駄目だろう。
別に仕事ほおり投げてまで来るような事じゃないしな。
それに、劾に無理して欲しくない。

っても、アイツはきっと俺の誘いを断らないから無理して来ようとするんだろうな。
目の前の画面でどうしたら良いのか思案している劾を見てると絶対に来る気がする。
だから、、俺は自ら断る事にした。



「あ〜、無理っぽいならいいよ。サーペンとテールも結構忙しいだろ?」

「お前ほどじゃない。少しくらいなら・・・・」

「いいって!流石にリーダー連れて行くのはまずいよな。
悪かったな劾。俺そろそろ休憩終わりだから、またな!!」

「おい、ロウ!?」



まだ何か言おうとするアイツの言葉をよぎるように俺は通信を切った。





















「はぁ〜〜。馬鹿だな、俺」


思い出すだけでも馬鹿だなって思う。
そんな誘いをしてもアイツが困るって考えがあんまりにも足りてなかった。
仕事中の奴を呼び出すなんてそうとうの考え無しだ。


俺はレッドフレームを使って星を乗せた。
そしてレッドフレームから降りると、最後の点等チェックを行う事にした。


「よし、8頼むぞ。」
『任せとけ!!』


8のその言葉(文字だけど)と共にツリーの電球と星がいっせいに白く輝きだした。

今回のツリーは普通の樹で作ったんじゃなくて幹も枝も葉も全て機械で作った。
普通とはちょっと違うツリーがいいって言われたから、全てをメカで作って白く光るツリーを作ることにした。
白光色自体はすぐに出来たが、ツリー全体が光るようにする為に幹の部分のパネルにもコードを巻いて
いく作業は結構大変だった。
でも


「綺麗だよな・・・・」



まるで、吸い込まれるような白

想像以上の出来に満足した



「・・・雪?」


ツリーをじっと見上げているとそこに電球以外の丸い反射があってそれはゆっくりと落ちてくるものだった。
雪はさらにツリーの灯りを綺麗に見せてくれる。
「どおりで、寒いと思った」

寒くなってきたから髪を上げる為に使っていたバンダナを首まで下げ、髪をおろした。

この町並みとツリーの灯りは、まるでひとつの絵画のように幻想的なものだった。





「・・・・・・・一人で見るのはもったいないな」


べつに、前からしていた約束という訳でもない。

クリスマスだからって張り切るようなやつでもない。

だから、さっきのクリスマスだからってのは言い訳

本当は理由なんてどうでも良いからこの綺麗な景色を一緒に見たかっただけ。

ただ、逢いたかっただけ。




「逢いたいな・・・・・・・・・劾。」


「呼んだか?」

「えっ?!」


帰ってくるはずの無いと思っていた返事と共に、たくましい腕が後ろから俺を抱きとめた。
顔を見なくても相手がわかる。
なぜなら、この腕の中は俺がもっとも落ち着く場所。


「遅くなったな・・・・ロウ」
「劾、なんで・・・・?」
「お前が誘ったんだろ。」


俺がそう問えば苦笑してアイツは答えた。
でも、俺が聞きたいのはそう言うことじゃなくて!!


「なんで、ここにいんだよ?」
「夜の見回りは少数で構わないからな、イライジャに任せてきた。」
「そ、そうなんだ」



イライジャ、ごめんありがとう。

今度サーペンとテールのメンテナンスに行くときはお前の機体を隅々まで改良してやるからな。




「コレが、お前の言っていた凄いものか・・・・・」
俺が、心の中でイライジャに対して凄い感謝していると劾が話し掛けてきた。


「あ、あぁ!そうだぜ。全長約30M、光は全て白光色のホワイトツリーだ。」
「そうか・・・・凄く綺麗だ」


劾がそういってくれるだけで、頑張ってよかったと思えた。


暫くそうして二人でいると、時計塔から0時の鐘がなった。



「メリークリスマス、ロウ」


そう言いいながら劾の降らしてくれるソレは何よりも暖かかった。


「劾、来てくれてありがとう」



ホワイト・メリークリスマス、それは恋人たちの甘い時間。





- Fin -