本当の運命はこうじゃなかった。
あの子が足りなかった。
種を
育ててくれる
光が
足りなかった・・・
飛翔 ACT、00
『これより、第31回 全国剣術大会 高校生の部 決勝戦を始めます。』
広い武道館に場内アナウンスの声が良く響く。
周りの客席にいるたくさんの観衆とカメラマンは、これから行われる決勝戦を待ちかねている。
『白・北条高校3年男子 叶 貴史・・・』
名前を呼ばれて相手は出てきた。
巨漢のいかにも武道やってますって感じの男だ。
次は私の名前。
『・・・赤・誠真高校1年女子 。』
そのアナウンスを聞いて辺りがざわめいた。
所々で、その話の内容が聞こえてくる。
「・・・女だってよ。」
「マジで?確かに男にしては華奢だが・・・」
「男かと思った・・・」
その内容に腹が立つがとりあえず気を落ち着かせいようと、
私は胸くらいまでの長さがある上を結いなおし、前に出た。
ふと、横を見ると親友の笑いをこらえている顔が見えた。
―――あの野郎、あとで覚えとけよ・・・・。
口元に手を当てながら肩を振るわせる親友に苛立ちながら私は試合の場へと向かった。
試合の壇上に立つとお互いに戦う挨拶として握手をまじわした。
口元には余裕の笑みを浮かべている。
すると、審判には聞こえないような声で相手の男は話し掛けてきた。
「ほぉ、近くで見ると一応女っぽく見えるじゃねぇか。もっとも、これから俺と試合をして
その女の顔を保てるかどうかわからねぇけどな。手加減してやろうか?」
醜い顔をさらにゆがめて相手はなめるような視線でこっちを見てきた。
かなり不愉快だったが、これから試合があるのでいらぬ争いをしないように適当に答えた。
「結構です。終わってから、女だと気付いたから負けてやったとか、手加減したんだなんて
言い訳聞きたくありませんから男だと思ってくれてても今だけは構いませんよ?」
「てめぇ、バカにしてんのか」
「先に挑発してきたのはそっち。最も、見た目で人の力量を計るヤツに負ける気はしないけど」
「んだとぉ、・・・・」
『両者構え!』
男の言葉は審判の言葉に消された。
私は言われるがままに構えた。
男はまだ私のほうを見てなんかいてくる。
「そんだけの大口叩いたんだ。その実力を見せてみろや」
「無論」
竹刀の先が触れた。
審判の手が挙がる。
『はじめ!!』
男の竹刀が振り上げられ私の面へ落とされそうになる。
それを軽くよけ、間合いを取った。
「おい、見たか!?あの叶の初手をかわしたぞ!」
「あぁ、たいていのヤツはあの初手で面を捕られるのに・・・」
「何もんだ?あの一年」
「クス、知らないの?」
「えっ?」
急に、噂話をしていたカメラマンや記者に話し掛けた少女。
先ほどまで何故か、肩を震わせて笑っていた子だ。
「知らないとは・・・?」
「アイツの名前ですよ。 」
「そんな、一年生で知っている人間なんて・・・・」
「飛翔」
「ヒショウ・・・まさか!?あのっ!!?」
一人のカメラマンが彼女の言っている事を言い返して驚きの声を上げた。
彼女はとても面白そうに笑っている。
「今の剣術界では一番の実力を持つといわれる、空華流剣術、師範代の娘・・・漆黒の飛翔」
「そう、剣術界ではそう呼ばれるわね。」
そう言って彼女は一番前の席にまで去っていった。
『胴有り!勝者 赤!』
試合はの勝利だった。
は背後で腹を押さえて蹲っている男に目も向けず、自分のベンチへと戻った。
ベンチに戻るとベンチに近い一番前の客席から長い金髪が見えた。
その金髪の持ち主はが戻ったのに気がつくと笑顔で振り向いた。
「お帰り〜!」
「真咲。お前笑ってただろう・・・さっき。」
眉間にしわを寄せながらは親友を睨み付ける。
睨まれた真咲はというと、そんなもの慣れたもんで平然と受け流している。
「それにしても・・・」
チラリと真咲はさっきまでが戦っていた相手を見る。
まだ、腹を押さえていて痛そうだ。
「あそこまでするとは珍しい・・・。普段の試合ならあそこまで相手を痛がらせないよ。」
「だってさ、手加減してやろうか?とか、近くで見れば女に見えるとか、めっちゃ失礼なこと言ったんだよ!」
「そうなんだ。相手にけんか売るなんてバカなやつ。」
「いい気味だよ」
「・・・にしても、何であんたは男と間違われるかな?別に背がそこまで高いわけでもなければ
ゴツイ訳でもないし・・・ちょっと口が悪いけど。」
「・・・・ケンカ売ってんのか?」
「いやいや、そんなつもりは無いよ。んん〜、でも男子には男と間違われるけど
女子はあんまり間違わないよね?」
「そうなんだよね・・・髪も短くないのに。」
「でも、女だと分かればアンタモテモテよ。綺麗な顔してんだから、目もパッチリで」
「そうかなぁ、私から見ればあんたの方が女の子らしいよ」
私はチラリと真咲を見た。
綺麗な金髪が肩の辺りでそろえられ、パッチリとしたまつげの長い目は青色で綺麗。
「まぁね・・・少なくともあんたよりは女の子らしいはずよ。
私、銃持ってても今日の対戦相手のゴリラ野郎とはやりたくないわ。」
「・・・・・」
「それより、記者とかのインタビュー答える気無いんでしょ?表彰状は後日にもらえるらしいし、帰ろうよ」
「OKわかった。」
「じゃぁ、武道館北入り口でね」
そういって真咲は去っていき、は控え室えと帰っていった。
待ち合わせ場所へ行くと真咲が既にまっていた。
「ごめん、真咲。待った?」
「べつにそんなに待ってないよ。それより!!」
「なっ!?なに?」
「なんで着替えてないの?」
「あ・・・あぁ、そのことか。一応着替えたよ?
ほら、さっきの胴着は紺色だったけどこれは黒の胴着。」
ひょいっと、は大きめの鞄を肩に担ぎなおして歩き出す。
「これから練習あんの?」
「ううん。自主練。」
「ふ〜ん・・・そういやさ、あれ見た?先々週の」
真咲の『あれ』に私はいち早く反応した。
あれとはそう、私たちがはまっているテレビガンダムSEEDのことだ。
偶然、見るテレビが無かったので二人で見ていると丁度始まったばかりで話も分かりやすくとても面白かったのだ。
人として学ぶ事もかなりあったし・・・
私たちはそれ以来、ガンダムSEEDにはまってしまい見続けていた。
そう、見続けて「いた」のだ。
先週最終回でちょっと納得できない終わり方で終わったのだ。
「あれ、絶対おかしいよね。キラ泣いちゃってるし・・・」
「うん。停戦協定を結んだといってもその後どうなったかわかんないし・・・
もしかして、視聴率が足りなくて打ち切りとか?」
「いや、そりゃないでしょ。あれって大体視聴率30%くらいだし・・・あれ?」
「ん?どうしたの」
「いや、あの子。動きが変だなぁって」
確かに、真咲が見ている方に視線を向けると明らかに不自然な動きをする子供たちが見える。
なんか、気になるなぁ・・・・
あっ、真ん中の男の子がしゃがみ込んじゃった。
「真咲、ちょっと寄ってもイイ?」
視線は子供たちの方へ向けたまま私が問い掛けると、真咲は軽く笑った。
「駄目、って言う訳無いじゃん。私も気になるし、それに駄目っていっても行くんでしょう?」
「うん、ありがとう。」
私たちはちょっと小走りになりながら子供たちの居る公園へと向かった。
私たちに気がついた、子供の一人が泣きながら私に飛びついてきた。
見たところ10歳くらいの小さな子だ。
「どうしたの僕、何かあったの?」
優しく真咲が問い掛けるとその子はしゃくりあげながら話してくれた。
「ひっく、あ、あのね・・・あたしたちね、っく、鬼ごっこしてたの。
そしたら、ヒロ君が暑いって言って・・・急に倒れたの・・・」
「うん、うん。分かったありがとうね。ヒロ君の家の電話番号わかる?」
「・・・うん。」
「じゃぁ、電話してヒロ君のお母さんに此処に来てくれるように言ってくれる?
ヒロ君はお姉ちゃんが何とかするから・・・ね?」
すると、その女の子は涙を拭いて真咲から携帯電話を受け取ると電話をした。
「ヒロ君のお母さん、すぐに来るって。」
「OK、わかった」
私は、ヒロ君に近づいて彼を仰向けにした。
汗がたくさん出ていて、息が荒い・・・
そして今日は日が照っていて凄い温度だ。
「軽い熱中症か・・・よし、すぐに治るからね。」
私はそう言って彼を心配そうに見つめる子供たちに笑いかけると、右手を彼の額にあて、
言の葉を紡いだ。
『水の流れ、熱を流し、心地よさを誘う。霞冷』
私の手から冷たい空気が流れ出て彼の身体の熱を冷ます。
「ん、・・・」
「気がついた。ヒロ君、起きれる?」
「うん、・・・僕?」
手をついて起き上がった彼は辺りを見回した。
すると、彼の母親を連れた真咲が私の隣にきた。
母親は慌てた様子で彼を抱きしめた。
「ヒロ!」
「大丈夫ですよ。今手当てしましたから、軽い熱中症です。
ただ、転んだひょうしに頭でも打ってたらいけないんで、あとで病院にいって検査受けてください。」
「あ、ありがとうございます。」
「いえ、困ったときはお互い様ですから・・・」
そう言って、彼と母親は病院に行ってしまった。
残された私たちは帰ろうかと、思ったけどさっきの女の子に呼び止められた。
「お姉ちゃん、ありがとう!これね、あたしが作ったの。
お花・・・あげる!!」
「え、いいの?」
「うん!お姉ちゃんヒロ君助けてくれたから!」
ハイ!と、差し出されたのは折り紙で作った花。
とても上手とは言いにくいけど女の子の気持ちが伝わってくる。
「ありがとうね。」
私は笑顔でその花を受け取った。
「―――いやぁ、モッテモテじゃん。 よっ、このタラシv」
「や、まて!その表現はおかしいだろ。少なくともお礼だぞ!!」
顔をニヤリと歪めながら真咲は私をからかって来る。
からかわれていると分かっていても、マジに受け取ってしまう私も私だけど・・・・
「ふ〜ん、それにしても便利な能力だよね、ソレ」
「まぁね。使い方さえ間違わなきゃな。」
「大人の前でやれば変な目で見られるけど、ああいう子供ならねぇ。」
「実際人前ではあんまり使わないようにしてるし・・・」
「そっか・・・あぁぁあぁ!!言い忘れてた!」
「なに?」
「いや、SEEDさこの間、続編が始まったんだよ。」
「はっ!?」
「だから、続編だって。あんたこの間の土曜日から大会で居なかったじゃん?
その日にあったんだよ。」
真咲から聞かされた衝撃的な事実に私は巣頓狂な声を上げてしまう。
そして物凄い剣幕で真咲に詰め寄った。
「な、な・・・何故にぃ!?んで、内容は?早く教えて!!」
「きゃ、ち、近いよ!!教える、教えるから落ち着いて!」
「あ・・・ゴメン」
真咲はふぅっと息を着いて乱れた制服のリボンを正した。
「まったく、落ち着きの無い!」
「ごめんってば!」
「はぁ、・・・内容だけど題名はSEED DESTNYに変わったよ。」
「ですてぃにぃ?・・・・あ『運命』か!」
「正解。英語苦手なくせに良く分かったね。んで、主人公はシンって言うんだけど、
彼はキラに恨みを持ってんだよね。」
「え、?なんで?キラは平和の為に戦ったんじゃないの!」
「それがさぁ、キラとアスラン・・・・オーブで戦ったじゃない?
ほら、ウズミが死ぬところの話。」
「あぁ、うん」
「そん時に逃げ送れた彼の家族が死んじゃったんだよ。
大事な妹まで巻き込んで。フリーダムの爆撃で・・・わざとじゃないけどね」
「そんな・・・・」
「それで、キラを倒す意味もこめて彼はザフトに入り再び戦争は始まったのです。」
て、感じかなぁ・・・と真咲はもう随分と近づいた自分の家の鍵を鞄から取り出していた。
逆に私はその衝撃的な展開にショックを受けて呆然としていた。
そんな私を見かねた真咲は急に声のトーンを落として私に聞いて来た。
「・・・ってさ、異様にSEEDの事になるとマジに考え込むよね。」
「へ?」
「なんか、凄い現実として考えてる気がする。」
その言葉に私の心臓は早打ちしてきた。
―――――ソレは、自分でも思っていた事。
何故私はこんなにも本気になって考えるのだろう・・・
現実ではない、物語。
自分には関係ないはずなのに凄く気になる。
何故?――――――――――――
急に身体の中で何かがうごめいているきがした。
声?
『あなたは知っている。』
―――え?
『悲しい結末を・・・』
―――何、この声。
『貴方が運命に足りなかった。』
―――何のこと。
『種を育てる光が・・・』
「?・・・ってば!」
「・・・・ぁ」
「どうしたの?大丈・・・・・」
「ゴメン!ボーっとした。私、そろそろ帰んなきゃ。じゃぁね!真咲!!」
「え、うん。じゃあね」
私に掛けられた言葉を笑顔に隠して私は家まで走って帰った。
バタンッ!!
私は道場に着くと扉が壊れるんじゃないかって位激しく道場の扉を閉めた。
閉めた扉に全体重を預け、両腕を交差させ自分の肩を抱きしめた。
まだ、体の中が渦巻いている感じ。
気持ちが悪い・・・
そうやって、何分か蹲っていると隣の棚にある自分の刀が見えた。
亡き父から貰った、大切な刀。
何を思ったのか。
私はその刀をに手を伸ばし握り締めた。
寂しかったのだろうか
何かに縋りつきたい気分だったからか
思わず私は震えるような声で刀の名を呟いた。
「・・・飛翔」
私がその名を呟いた瞬間、辺りが真っ白になり私の意識はそこで途切れた。
意識が途切れる寸前に聞こえたのはあの時と同じ声。
『本当の運命は・・・貴方がいなければならなかった。』
―――――――――さっきから何の事を言ってるの?
『このままだと、まともに話はできない』
―――――――――じゃ、どうするんだ。
『こっちに来て・・・。帰ってきて』
―――――――――帰る・・・?
『種を・・・・育てて』
to be contenue.......