いつも大きな声を張り上げて
沢山の人たちに適切な指示を伝える。
その強い意志をもった言葉と眼
それが僕を惹きつけた。
君こそが誰よりも何よりも輝いて見えたんだ。
選出基準 後編
ばたばたと沢山の足音が聞こえる。
飛び交う声、声、声
「さん!脈拍30、下がってます。」
「心拍数もです!!」
「輸血、足りません!!」
誰もが慌てる惨状。
誰もが駄目かと暗闇に迷いそうになる。
そんな時に聞こえる声。
たった一つの暗闇を照らす光。
「酸素吸入増やして、心臓マッサージを持ってきて!」
「はい!」
看護婦の持ってきた機械を手に持って、助けたい命にむける。
ダンッ!!
「戻りません・・・」
「もう一度、Lvを3上げてやってみます。」
ダンッ!!!
「・・・・ぁ、心拍戻りました!!」
ひとつの壁を乗り越えて光を取り戻す眼。
そんな周りの意思を読み取ってはメシアのような笑みを浮かべた。
「そうよ、諦めないで。最後までこの人を救うことだけを考えよう。
そうすれば・・・・必ず助ける事が出来る!!」
「「「「「はい!!」」」」」
彼女を信じていけば命を救う事ができる。
彼女は命のメシア。
彼女と共に戦っていく。
ここはもうひとつの戦場
今ごろ、向こうはどうなっているのだろうか。
はどうしているのか。
キラは食堂で一人、コーヒーを飲みながら考え込んでいた。
「どうしたんだキラ」
「アスラン?」
「端から見たらスっゴイ沈んでるように見えるぞ。」
アスランはキラの隣に自分のコーヒーと機体の資料を持って座った。
「それってジャスティスの?」
「あぁ、に改良したいところを図面に記して持って来いって言われてな」
「それで最近遅くまで起きてたんだ。」
「よく知ってるな。」
「うん、カガリに聞いたからね・・・・・・」
「・・・・キラ、本当にどうしたんだ?」
何時ものような会話なのに覇気のないキラの声。
心配するなって方が無理だろ。
「そんなに僕って顔に出てる?」
「というより、雰囲気やら、なにやら色々元気がない。と喧嘩でもしたのか?」
「喧嘩・・・とはちょっと違うかな。
何かさ僕最近に避けられてるみたいなんだよね。」
「がキラを?」
「それでさっき、やっとを捕まえて聞いてみたんだ。
そしたらってば自分のどこに惹かれたのかって・・・」
「それで?」
「意味がわからなくて、とっさに僕何も答えれなかった。
そしたら自分に誇れるものなんて何もない。そんな自分のどこが良いのかって。」
「キラ、がそんなこと言った理由わからない?」
「え?」
「俺は、気付いてるよ」
「気付いてるって、何のことだよ?」
なんで、あんな事聞いたのか判らない。
僕はいつだって君のことを考えてるのに
どうして伝わらないんだろう
「あれぇ?キラさんじゃないですか。」
深い思考の中に沈んでいた僕につい最近知り合った女性の声が聞こえた。
「お隣いいですか」
「暇なら私たちと話しません?私、丁度仕事の区切りがついたんですよ」
「いや、ちょっと今は・・・・」
「いいじゃないですか!私、キラさんに用事があるんです。」
「・・・・何?」
自分の思考の邪魔をした女性はなんの用事があるのだろうか・・・・
その女性は馴れ馴れしく僕の手を握って顔を近づけてきた。
「私、キラさんが好きなんです。付き合ってください。」
何を言っているのだろうか、この人は。
僕がと付き合ってることを知らないのか?
「キラさんが、っていう整備の人と付き合ってるのは知ってます」
「知ってるなら・・・・・」
「でも!!私はキラさんが好きなんです」
「無理だよ・・・僕が好きなのは彼女なんだ。だから、君には悪いけど」
「どうしてですか!?」
「キラさん、はっきり言って私たちキラさんに彼女が似合うとは思えません!」
「私たち、いっつも思ってました。なんであんな人がいいのかわからないって」
「はぁ・・・」
アスランが僕の横であからさまなため息をついたのが聞こえた。
そういえば、が僕から距離を置くようになったのは彼女たちと話し始めてからだ。
やっとわかった。
つまりそう言うこと?
この子達が僕を狙っていて
偶然ソレを聞いたは僕から離れたってこと?
「ねぇ、キラさん!!絶対私の方がいいですって。
あんな何時も大声上げてるようなガサツな子、別れてください!」
「そうですよ。この子の方が美人でしょう」
「別れ話を切りだし憎いなら私たちで話ときますから」
「・・・・・・・・」
あぁもう、なんだか腹が立ってきた。
なんでこの子達はこんなに自分を優位に見れるのか不思議だ。
が綺麗じゃない?
君たちが彼女の何を知ってるっていうんだ
大声を上げてるがさつな子って誰?
彼女が大きな声を出さないで誰が整備の人や重症患者に声をかけられるの
確かに目の前にいる君たちは綺麗かもしれない
綺麗に髪を整えて
綺麗に化粧をして
綺麗な軍服を着て
けどソレだけが本当の綺麗だと思ってるのか・・・・
本当に綺麗な人って言うのは
「・・・ぁ、」
「アスランに・・・・・キラ?」
僕達以外に誰もいない食堂に手術を終えたが入って来た。
それに、いち早く反応したアスランが声を掛ければ、何があったのか分からない彼女は
首を傾げながらやって来た。
「なにがあったの?」
「いや、それが、・・・ね?」
「ん?」
言いよどむアスランは伝えるべきか否か僕に視線をよこす。
が、僕が答えるよりも先に反応した人物がいた。
「さん、私がキラさんに告白しました。」
「ちょっと君・・・」
「私はキラさんが好きです。私は自分がさんに劣ってるとは思わない。貴方だってわかるでしょ?」
「・・・・・・・」
「だんまりですか。」
彼女はに詰め寄りながら自分より背の低いを見下すように見つめる。
反対にはといえば視線を下げて、どう返したらいいのかわからないようだ。
もう、ここまでくれば僕の堪忍袋の緒もブチ切れるよ?
「ちょっと、何とか言ってよ。それともキラさんと別れてくれるの?」
「・・・・・・私は」
「アンタなんかにキラさんはもったいないって言って・・・・・・」
「いい加減にしろっ!!」
「な?!」
「・・・キラ?」
こんな風に声を荒げる事はめったに無いだろうと思われていたキラの怒声は彼女の言葉をも飲み込んだ。
「が僕に相応しくない?ガサツだって?」
「き、キラさ・・・」
「君、何様のつもり? 僕はが好きだから付き合ってるんだ。
相応しいとかそうじゃないとか君たちなんかに判断されたくないね」
「・・・そんな」
「そうやって化粧して、髪を整えて、まっさらな軍服を着るだけが本当の綺麗だと思ってたらバカだね。
本当に綺麗なのは、いつも真っ直ぐに人を引っ張っていける人。
その人間性をしっかりと理解できる人こそが本当に綺麗な人なんだよ。
・・・・まぁ、君達のように外面だけで媚売ることしか出来ないような人間にはわからないかな?」
最後は嫌味たっぷりに笑顔で言ってやった。
「そ、そんな?!私たちは・・・っ」
「キラ、もういいだろ」
「君たちと話す事なんて無い。・・・消えろ」
「っ・・・」
そういうと、彼女たちは走って逃げていった。
僕はソレを見送るとの傍まで近づく。
「・・・・」
「・・・キラ」
「が僕を避けていたのって、あの子達が原因でしょ?」
「・・・うん。」
「なんで、相談しなかったのさ。僕は何時もの事しか考えてないよ」
「ごめん。・・・このあいだ、偶然あの子達の会話を聞いちゃって。」
「それで?」
「私は・・・・汚いのっ」
「?」
顔を伏せて、両手で自分の作業服を握り締めて震えるの目から綺麗な涙がこぼれた。
キラはの小さな体を優しく抱きしめた。
「あの子達が、言った事間違ってない。いつも大声出して、体中に整備の汚れをつけて・・・
それが、女の子らしくないって判ってるけど!少しはおしゃれしてキラの隣を歩いてても恥かしくないようになりたいけど!
それでも!!私はみんなの命を預かる仕事をしてるから、ソレを変えることは出来ないっ」
「うん・・・わかってる」
「私はこの仕事に誇りをもってる・・・・だからあの子達がキラに告白するって言ったとき
どうしようもない自分をキラが捨てても仕方が無いって考えた。
そしたら、私の中でドロドロした嫉妬が渦巻いてて、そんな汚い私を見て欲しくないから」
「だから、距離をおいたの?」
「・・・うん」
それを聞くとキラはから体を離した。
「・・・馬鹿だなぁは。ねぇアスラン」
「そうだな」
「ふぇ?」
「僕が以外の人と付き合うわけ無いでしょ。
さっき、は言ってたじゃないか。自分の仕事に誇りをもってるって
僕はそんな真っ直ぐなが好きなんだよ」
「キラ・・・」
「だいたい、がおしゃれしないのはソレばっかりを気にして整備に不備が
あったら嫌だからって、立派な理由があるのを俺達は知ってるしね」
「アスラン・・・」
「だからこうやって安心して自分の機体を預けられる。じゃあね」
そういってアスランは図面をに渡すと食堂から出て行った。
「僕の言いたい事言って行きやがって・・・・」
「キラってば」
「けど、が嫉妬したっていうのは嬉しかったかも」
「ば、ばか!!」
「〜、顔真っ赤だよ?」
ワザとからかう様にキラはを抱きしめる。
よりいっそう強くなった包容力には益々顔を赤らめる。
自分の役目を誇りと思える貴方が何よりも誰よりも僕の宝石。
君は自分の選んだと言っていたが少し違うよ。
僕はただ、君に一目ぼれしただけ。
本当に選ばれたのは僕なんだよ。
君の一番近くに居れる存在として僕を選んでくれた君を
ずっと
ずっと
愛してます。
END