見上げた青空がこんなにも美しいと思ったのは彼とともに手に入れたものだからだろうか。
自分の起こしている行動が彼に絶望を敷いているものだとしても自分は歩みを止めない。
自分の起こしている行動が自らを破滅の道へといざなっていたとしても自分は歩みを止めない。
この身が滅んだとしても貴方を思って戦えることが一番の誇りです。
貴方が空を見上げた時、
この空が私の屍の上に成り立っているものだと知られぬように私は勝手に消えるのです。
どうか、笑っていてください
新たなる幸せを見つけて。
どうか、憎んでて下さい
勝手に消えていった私を。
どうか、・・・・・忘れてください
私のことを。
Ghost・Note act、5
「アッシュ、そのルークの日記の内容を声に出して読んでみてください。」
「お前たちはもう読んだと言ってなかったか?何故、読み聞かせる必要がある」
必要以上のことはしない主義のこの男が何故、俺に読んでもらうなどという二度手間をかけようとするのだろうか。
「読んだには読んだんだが・・・な」
そんな俺の疑問に答えようとしたガイの言葉もなんだかはっきりしない。
「とりあえず、読んでみてください。そうすれば私達があなたに読むようにいった理由もわかりますから。」
「・・・・わかった。
ウィンディーネカーン レム15の日
今日で俺達がこの世界に帰ってきて1か月が経った。母上や、父上は俺達に内緒で料理長に頼んでディナーを用意してくれていた。
大好きなエビにチキンの料理が沢山。しかも調子がいいからといって母上も手作りのデザートを作ってくれた。
すっごいおいしかった。大好きな父上、母上、アッシュ、屋敷の皆と一緒にこんな風に過ごせるなんて俺って幸せだなぁって思う。
ウィンディーネカーン レム16の日
今日はアッシュと剣舞の練習をした。軽装に着替えて打ち合いをしているとアッシュの首に何かが飾られているのが見えた。
何だろう?ってアッシュに聞いたら柔らかい笑顔を俺に向けて「俺の大事なものだ」ってそれだけ。
よくわかんないけど、言った後のアッシュはなぜか恥ずかしそうに顔を真っ赤にさせて「っさっさと続きをするぞ!」って突っ込んできた。
何照れてんだよ・・・・けど、滅多に見れないアッシュのそんな様子が可愛いなって思っちゃった俺は本当にアッシュが好きなんだなぁ
ウィンディーネカーン レム17の日
今日の執務は書類整理ばっかり。いつもは退屈だぁ!って思うけど、今日はそんな風に考えなかった。
だって今日の書類は世界のレプリカ情勢について書いてあったから。レプリカの街も順調にレプリカたちの学校として機能してるし
最近ではレプリカとオリジナルの結婚もあるって。それを見ていたら俺は思わず涙が出てきた。
うれしい、嬉しい、レプリカも人だって見てくれる世界ができて、みんなで幸せになることが出来そうで本当にうれしかった。
おい、これ読むことに意味はあるのか?普通の日記にしか見えないが・・・」
ずっと書いてあるのはアッシュの記憶にもある毎日の出来事ばかり。
本当にこれを読むことにどんな意味があるのか俺にははっきりしないためにわからない。
「いいから、読んでください。問題はその先から始まります。」
「ちっ・・・
ウィンディーネカーン レム25の日
なんだか、朝から胸が痛い・・・・。まさかとは思ったけど昨日あった事件の書類にあった事件を見てなんとなくそうなんだって理解した。
とりあえず、この事件の場所はエンゲーブの近くであったらしい。野党だと書いてあったけどそうじゃないと思う。偶然かもしれない。
本当に野党かもしれない、けど俺の体の痛みと時期を考えるとたぶん俺の考えであってるよな。
ウィンディーネカーン レム28の日
痛みはついに俺の内面だけではなく外側にも表れ始めた。急に動かそうと思った体の一部がひきつったり、最終的には血を吐いてしまった。
運のいいことに部屋にはだれもいなかった、アッシュもナタリアに会いに行ってたから俺は一人だった。よかった・・・・
ノームカーン レム1の日
もう、そろそろかもしれない。まだ、俺の異変には誰も気づいていないけどばれるのも時間の問題だろう。
アッシュに何も言ってない俺はアッシュのことを裏切っているかな?でも、まだ話せないんだ・・・・・これはローレライとの約束だから。
今日の吐血は回数が多かったから本当に俺の体は限界に近付いている。
とりあえず、今まで溜めてきた事件の記録をもう一度見直してこれからの作戦を練らなくちゃ。
ノームカーン レム6の日
とうとう、アッシュにばれた。急激に襲ってきた俺の胸を焼くような痛みと口に上ってくる血の味。
あまりの激痛にうずくまっているとアッシュが帰ってきてしまった。
・・・・・・もう、ゲームオーバーだね。
ノームカーン レム7の日
ジェイドが俺を診察しにきた。けどジェイドには悪いけど俺の体のことはもう無理なんだ、つらそうにしているジェイドを見たら俺は思わず声をかけそうだったけど、
今、話せば俺は言ってはいけないことまで言ってしまうかもしれないから。だから俺は曖昧に笑って誤魔化すしかなかった。
そして一緒に旅をしたみんながかわるがわる俺の見舞いにきた。みんなごめんね・・・・まだ話せないんだ。
ノームカーン レム10の日
今日はアッシュに頼んでナタリアを呼んでもらった。これから先のアッシュを頼むためだ。正直今の彼の状況はまずいと思う。
このままでは俺の作戦も国の将来も危ない。それだけ好きでいてもらってることはかなり嬉しいけどふ抜けたアッシュは嫌なんだよ。
だから、ナタリアにもしもの時はアッシュに活を入れてって頼んだ。泣きそうな笑顔を浮かべる彼女は本当に優しい姉のような存在だった。
ノームカーン レム11の日
もう、ペンを握るのもつらい。きっとこの日記は今日で最後だろう。
事件が起こるたびに痛みの増していく心臓。怖いかと言われれば怖い。けれどこれははじめからわかっていたことだ。
俺が自分でこの道を選んだ、だから後悔はしない。当面の作戦は組んだ、ローレライにも話した。だから後はアッシュが俺の後を追ってこないように
説得して、俺はもう動けないから捨てることはできないこの日記を隠して時間稼ぎをするだけだ。
あいつらは、着実に力を増している。だから俺は戦おう、守るために。 なんだ、これは・・・・」
あいつは、何を隠してるんだ・・・・・
作戦?戦い?ローレライ?
アッシュは己の持っている日記を開いたまま呆然としている。
しかし、ジェイドはそれを良しとはしなかった。
「いつまで、茫然自失しているつもりですか?まだ続きがあるはずです。読んでください。」
「・・・・何を言っている?」
「この次は真っ白な、ページだと思いますか?そんなはずありませんよ、そのページからはわずかながら音素の流れを感じます。
きっとペンを持てなくなった彼が残した最後のページです。我々には読むことができませんでした・・・・・・ですから読んでほしいのです。」
最後のページ・・・
他の奴らには読めなかった
あいつの真意
探りこんでやる
アッシュは何もないはずのページに掌を当て、光を、超振動を使った。
その瞬間、何もなかったはずのページに新たなる文字が出てきた。
そしてルークの幻影も
「っルーク!」
「アッシュ、落ち着け!幻だ。」
「くそっ!!」
目の前で、苦笑を浮かべるのは確かに己の半身で。
けれども、透けて見える体は彼が幻だということを如実に表していた。
『そろそろ、落ち着いたころかな?』
「?」
『多分ね、俺の予想だとアッシュが取り乱して誰かがとめてくれるんだろうな思って間を空けたんだ。誰が止めてくれたのかわからないけどありがとう。』
「ふふふ、アッシュ、ルークに行動が筒抜けみたいですよ。」
「うっさい眼鏡!!」
『きっと、ジェイドは嬉々としてアッシュをからかってるんだろうな』
「?!」
「はっ、てめぇだって読まれまくりじゃねぇか」
「・・・・・まだまだですね私も。」
懐かしい
しかし目の前で笑っている彼はきっと、今のルークにつながってるんじゃなくて昔のルークが音素によってメッセージを残したものであろう。
先ほどから、予想しているような話し方ばかりしているのもそのせいだ。
すると、ルークはまじめな顔になって私たちのほうを見据えた。
その表情が彼が本当にそこにいるような感じがして胸が締め付けられた。
『きっと、今これを見ているということは俺は消えたんだろうね。みんなの前から・・・・・けど、これは決まっていたことなんだ。』
「どういうこと?」
「ティア、今は疑問を口に出しても答えてくれません。これは、ただの映像で記録、私たちと会話をしているわけではないんです。
ですから、彼のいうことを聞き逃してはいけませんので黙ってください。」
「あ、失礼しました」
「いえ」
『もう、みんな気づいていると思うけど特殊な音素がこの世界を覆ってる。それは、元は第7音素だったものなんだ。
それが、あることを原因に汚染されていった。そしてその音素は意志を持っている、ローレライや他の音素と同じでね。
彼が生まれたのはローレライがヴァンに囚われたことが原因の一つだった。そして、俺がローレライを解放した瞬間にローレライから離れていったんだ。
その時はまだ、そこまで強大なものじゃなかった。けれど、ローレライの音素を自分の力に汚染して取り込み、彼は強くなった。
そして、汚染された分第7音素は減り、俺を生き返らせるには足りなかった。』
「やはり、そうだったんですか」
『今、あいつは第7譜術師とレプリカを殺して音素に戻して自分の力にしようとしている。そして、ヴァン師匠とは違った形で世界を消すつもりだよ。
俺は、そんなこと許さない。それを止める方法をローレライから聞き、約束したんだ。絶対に世界を消させない、守って見せるって・・・・』
そう言ってルークは一度視線を逸らし意を決したようにまっすぐに俺達のほうを見てきた。
『最後に頼みたいことがあるんだ。』
「 ・・・・・・・」
『俺を探そうとするな。』
「な?!」
『この戦いは生身の人間にはキツイんだ。だから、俺を探さなくていい・・・・・俺を探すくらいなら少しでも多くのレプリカや第7譜術師を守って。
これ以上、あいつの力が増えると俺は負けるかもしれないんだ。だから・・・・・頼むよ』
そう言って、彼の姿はだんだん薄れていった。
アッシュはそれを良しとはしなかった。
「待てっ!ルーク!!」
『・・・・・アッシュ』
まるで、呼びかけに答えてくれたようだけどそうじゃないんだということはわかってる。だが・・・・
「ルーク、俺は・・・・」
『アッシュは俺に囚われちゃ駄目だよ。お前には幸せになる権利があるんだ。アッシュやみんなが幸せに暮らしていけるように
障害になるものから俺が守から、だからもう俺には囚われないで新しい人を・・・・・・・』
「なれるわけがねぇっ!!俺は、・・・・俺にはお前だけ、だったんだ・・・・・・唯一の」
『俺はもう、消えたんだよ。戦いに勝っても戻ってこれるわけじゃない、だからさよなら・・・・・・・・・・・・大好きだったよ。』
「待てっ!待て、行くなルーク!!」
「落ち着きなさい!アッシュ、」
「落ち着けるか!!あいつが、ルークがまた・・・消えたん」
「いい加減になさいませっ!!」
パシッ!!
ジェイドとガイによって肩を押さえつけられていたアッシュの頬に熱い感覚が広がっていく。
今まで、黙っていたナタリアがアッシュを平手打ちしたのだ。
「な、タリア?」
「ルークと約束したんです、ふ抜けに活を入れて下さいと・・・・・。アッシュ貴方はそうやって、悲しんで幻影を追うことで貴方は満足なんですの?」
「なに?」
「ルークを諦めたのですか?彼の言うがままに新しい伴侶でも見つけますか?貴方にとってルークとはそんな簡単に諦めることの出来る者だったんですか?」
「・・・・・っ」
「今、貴方がしたのはそういうことです。消えたなどと、二度といわないで下さい。言えば貴方はルークの死を認め、諦めたことと同義なのですよ。
そんなこともわかりませんの?」
「・・・・・・・・・・・・」
「貴方が本当にルークを思っているのであれば、今アッシュはどうしたいのですか?このまま、ルークの言った通りのことだけいたしますか?」
「・・ょ・・ねぇ」
「はい。」
「冗談じゃねぇっ!!俺は、俺のやりたいようにやる。アイツの言った通りのことをしてもアイツ自身が帰ってこないんだったら俺にとっちゃあ意味のないことに等しいんだよ!」
「そうですね」
「俺は、俺のやりたいようにする。そして、あの馬鹿を連れ戻す。俺はルーク守られるためだけに一緒にいたんじゃねぇ・・・・背を預けあうためにいたんだ。」
「フフ、それでこそアッシュですわ」
その瞳にかつて、旅をしていたころの輝きをアッシュは取り戻した。
すべてはアイツを見つけ出して、取り戻すため・・・
「さすがはナタリアですね。ルークに頼まれたことだけある。」
「だね。さすがは幼馴染兼元婚約者、いきなり平手打ちをしたことにはびっくりしたけど。」
「アッシュもそんな事されるとは思ってなかったみたいだな。思いっきり叩かれたな。」
「素晴らしい、平手打ちだわ」
「まぁ、皆さんそんなに言われると照れてしまいますわ。」
「ナタリア!それは褒め言葉じゃない!!」
見当違いな考えにアッシュは大慌てでナタリアを制止した。
確かに、ナタリアに平手打ちをされるなんて考えもしなかったし、ふ抜けていた自部はモロに入ったがこれは男としての恥だ。
間違ってもルークが帰ってきてもバレないように心から祈ったアッシュであった。
ルーク、間違えないで下さい。
私達は貴方に一方的に守られるなんて良しはしませんのよ。
ともに、戦った同志ではないですか。
一緒に戦いましょう・・・・
貴方だけを残酷な運命に放り込むなどと愚かな選択は二度としたくないんです。
To be continued......
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はい、というわけでやっと動き出します!ここまで来るのに5話もかかった・・・・・ozl
いやぁ、アッシュのへタレ具合が書いてて楽しかった。
ナタリアの言葉も素敵にアッシュを追い詰めてくれて有難う!!