なんで、こんなことになった?
お前は
貴方は
帰ってきたのではないのか。
それともこれは
彼の最後の帰郷だったのか。
全てを覚悟する為の
Ghost - note others side - G&J -
もしここに神が居るのなら何故あいつを再び殺したりするのか問いただしたい。
あいつが何をした?
確かに罪を犯したさ、たくさんの人間を殺した。
だが、あいつはそのことを忘れずに生きた。
無くしたものを取り戻す為に、全てを守る為にその身を削って、涙して、苦しんで
世界に殺されて。
それでもあいつは笑って慈悲深く世界を許したではないか。
自分を犠牲にした世界を愛したではないか。
生還した後もその罪を忘れずに生きていたではないか。
悪いのは本当にあいつだったのか?
本当にそうなのか?
国は予言のために逝けといい、予言どおりに民を見殺しにしただろう?
最初に舞台をお膳立てしたのは国だろう?
口は悪かったが質問を何度もするあいつに何も言わなかったのは俺たちだろう?
なにかに焦っていたあいつを気にとめなかったのは俺たちだろう?
何も知らないあいつの唯一の情報源を奪ったのは家族だろう?
退屈な生きながら殺される世界に閉じ込めていたのは家族だろう?
全てを仕組んだのはあの男だろう?
あいつの信頼を裏切ったのはあの男だろう?
罪は本当にあいつ一人だけが被るべきものだったのか?
違う!
罪は全てに
罪は世界にあったのだろう!
それなのにあいつに全てを押し付け
一人、苦しませ
一人、死に追いやって
これ以上あいつをどうするつもりだ。
もう十分苦しんだ。
今度こそ幸せになっても良かったのに
「何やってんだよ?ルーク・・・」
もう見る事は無いだろうと思っていた墓だ。
あいつが最後の戦いで居なくなった後、何度も訪れては何度も否定したあいつの死。
約束を守る為に絶対に帰ってくると信じていたから。
そして彼も帰ってきた。
だから俺は
「認めない。お前が死んだなんて」
手向けるはずの花を丁寧に墓に置く事無く、乱暴に落とした。
まるでその墓には用は無いというかのように。
「お前は帰って来るんだよ・・・・・絶対に
こんなところで大人しくしてる様な奴じゃないだろうお前は?」
その顔に迷いは無かった。
お前を殺すような神の決めた道など俺はたどってやらない。
あのこは私の罪の象徴でした。
人の死を理解できず、ただ研究して勝手に作った愚かな私の技術。
私があのような術を作らなかったら彼の苦しみは無かっただろうに・・・・・
旅をしていたときに一度問うてみた。
貴方の今のレプリカとしての苦しみは私が原因だろうに、何故恨まない? と
すると彼はきょとんとした顔で私のほうを見たかと思うと、なにやら考えて今度は閃いたように笑顔を私に向けた。
「俺がお前を恨むなんてありえねぇよ。
ジェイドがこの技術を開発してくれなかったら俺は生まれなかった。」
「ええだからこそ何故こんな苦しい生を与えるのかと恨むのではないですか?」
「いや?生きてりゃ誰だってレプリカだってオリジナルだって辛い事や悲しい事を経験するもんだろ。
それは当たり前の事で、その中でも嬉しいと思う事が生きてる意味だと俺思うよ。
だから、俺は感謝してる。お前のおかげで俺は生まれて生きてこれた。
ジェイドや皆に逢えた。 ありがとう」
そう言って微笑を向けてくる彼は本当に綺麗な笑顔だった。
けれど儚いものだった。
それだけで、
生きてるだけで満足しているような感じに見えたから。
思わず、衝動的に彼を抱きしめてしまった。
そして私は思った。
この笑顔をなくしたくない。
ずっと見ていたい。
犠牲になんてしたくないと。
だから私は決意した。
最後まで諦めないと。
研究して貴方の体が耐えれるようにしてみせようと。
結局私にできた事は乖離を遅らせるだけの薬をつくるだけだったけど。
貴方が帰ってきて嬉しかった。
不審な点をいくつも見つけた上でだが・・・・・・・・・
「おう、帰ったか・・・・・どうだった?」
葬儀が終わってマルクトに帰ったのは二週間後だった。
政務が忙しく葬儀にはいけなかった彼が自分を迎えた。
「疲れましたよ・・・・ケセドニアは相変わらず暑くて」
「は?お前、あいつの葬儀に行ってたんじゃないのか?!」
あえて名前を出さないのは彼もまたルークを気に入っていてその死を認めたくないからか。
「ええ、行きましたよ。マルクと皇帝の名代として墓前の葬儀を済んですぐにケセドニアに向かいました。」
「どういうことだ・・・・・・・・・・」
何事も無かったかのように平然と構える私に対してピオニーは目を見開き玉座から降りて私の胸倉を掴み上げた。
「お前は、あいつの仲間だろう!?仲間が死んだのに何で平然と他所にいけるっ!!?」
「陛下」
普段ならめったにしない、というかしてはならない謁見のまでの皇帝の暴挙。
感情をあらわに自分の胸倉をしめ続ける男を睨む。
場所を考えろ、という意味で声を掛けるがきっと耳には入ってないのだろう。
「名代とかそんなの関係無しに最後の謁見に行けよ!!」
「・・・陛下」
「それとも、お前は未だに死というものが理解できな・・・・」
「ピオニーッ!!!」
「っ!」
感情のまま、言ってはならないことを口にした彼を名で呼べば、驚きで彼は黙った。
人の死が理解できない?
確かに昔の愚かな自分は理解が出来ずにいた。
だが、今は違う!
あの旅の中で確実に消えていくだろう彼を思えば胸が痛んだ。
それこそが死の悲しさだと身を持って知った。
消えないで欲しい・・・・・そう願っても彼はいなくなる。
自分はもうあえなくなる。
理解すればするほど心は冷え、痛み、悲しく、
そして泣きたくなった。
そんな自分にコレは禁句だ。
「落ち着きましたか・・・・」
「あぁ、悪い」
「いえ、ただ早まらないで下さい。私は別に遊びでケセドニアに行ったのではありません。
調べたい事があったので行ったんですよ。二週間近く調べて見つけた可能性。」
「・・・・。」
「私は彼がどこに居るのか、探してたんですよ。」
「え?」
「私は・・・・」
「失礼致します、カーティス大佐!バチカルのナタリア王女からの火急のお手紙です!!」
謁見の間に一人の兵士が私へと手紙をよこした。
それをすぐに開き、内容に目を通す。
「そうですか可能性を確定させる機会が出来ました・・・・・・・陛下、私は至急バチカルに向かいます。」
「それはいいが、さっき言いかけたのは何だ?」
行ったら直に謁見の間から出ようとする私の腕を陛下は引きとめた。
それに私は重い口を開く。
「彼の死は矛盾点が多すぎるんです。ですから私は彼の死を認めてないんですよ」
「なんだと・・・・・?」
ジェイドは不思議がるピオニーに一冊の資料を手渡す。
「これは私がケセドニアで調べた調査書のコピーです。
私はこれからバチカルへ確信を掴む為に、それとあの馬鹿な男をたたき起こしてきます」
誰が貴方の死を望んだ?
消えないで
逝かないで
皆はそれしか祈っていない。
貴方を取り戻したい。
ただ、それだけ。
To be continued.....