「本当にすまない。私にはお前に少ない時間しか与えてやれない」



光の中、聞こえる神の声

そこにいるのはローレライと呼ばれし神と朱色の青年。



「いいよ。消えるしかない俺に時間を与えてもらえるだけでも俺は嬉しい。
俺は時間切れになってもあいつを助ける事ができる、それだけで十分だよ。」


「・・・・・・・ルーク、我が愛しき子の最期に光あることを。」



神の声はとても悲しく辛そうに聞こえた。



「ありがとう、ローレライ」



しかし、青年の声に辛さは無く鮮やかな笑顔だった。









host・Note         act、0








暗い、暗い、まだ太陽が顔を出してもないバチカルの夜明け前

こんな時間に起きているのは警備中の白光騎士団の兵士くらいだろう。






ザァァァ−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−




水の音が五月蝿い。

洗面室の水道から水がずっと流れている。

排水溝へと流れる水の色は紅かった。



「げほっ!!は、はぁ・・・・・ぅ、くぁっ」


どれほどの時間そこにいたのかはわからない。

けれど、5分、10分程度ではない、もっと長い時間彼はそこで洗面台へと張り付いていた。


「はぁ・・・・。」


やっと、落ち着いた。



血の味がする口の中を水でゆすいでルークはそこへと座り込んだ。



最近、身体中が痛い。

この血を吐く位の強い発作も頻繁になっていた。

それが何を意味するのか、とっくにわかっている。



「もう、時間切れか・・・・・・・」


ポツリと寂しそうな声で呟いたものは誰にも知られることはなかった
















何も見えないくらいの強い光。

けれどそれは暖かく、まるで母親の胎内にいるかのような安心感があった。

これはあの時の夢か?


ヴァンを倒し、ローレライを解放したとき死んだ俺と乖離の起きたレプリカは第7音素の一つとしてフォニムの流れに身を任せていた。


レプリカ・・・・・とても大事な俺の半身。

今は寝ているが俺の隣にいる。

あんなに毛嫌いしていたのに今ではこいつがいないと俺は俺として存在できないような気がする。

それほどにコイツを愛しく思っている。




どれほどの時間をそこで過ごしたのだろうか、なんだか嫌な気配がしてきた。


明るく暖かかったはずのフォニムの流れは、暗く冷たい闇のような空間に変わってきた。


その禍々しい感覚に俺は少しの恐怖を感じ、隣で眠っているレプリカの手をとって
まだ明るいフォニムの流れているところへ逃れようとした。


だが、アイツの手を掴むはずの俺の手は何も掴めてなかった。


そこには何も無かったから



「レプリカ?・・・・どこだ、レプリカ!?」


俺の、大事な・・・・・何よりも欲してならないものが傍にいない。

それだけでこんなにも焦っている自分がいる。


フォニムの中をどれだけ探しても探しても見つからない。


黒いものが胸の中でざわめく・・・・



「ぁ、っしゅ・・・・・」

「レプリカ!!?」



声が聞こえた方へ振り向く。

そこへレプリカは居た。

体中をあの冷たいフォニムに包まれて。



「レプリカッ!」

「来るな!!」



レプリカを救おうと踏み出したがそれはアイツによって阻まれた。


「お前はこっちに来るなよ、アッシュ」

「何を・・・・」



こうして話をしている間にもフォニムがレプリカの体をますます包んでいく。



「こっちは光のない空間。そこにお前は似合わないよ。」

「レプリカ?」

「ここからは俺が---------------で------。--- っ -------から」

「何を言っているっ、レプリカ、聞こえねぇ!!」


ノイズが走っているかのように彼の言葉を消していく。

もうフォニムはあいつの全身を包んでいて顔も瞳しか見えなくなっていた。


そんな訳のわからない物に俺のレプリカをくれてやるものか!

そう思ってレプリカを追うが全く追いつけない。

むしろ距離はますます長くなっていく。



「ご、めん・・・・・な」



そう言ったあいつの顔は困ったような笑顔だった。


そして全てが暗黒に包まれた。


「っルーク、ルーク!!!」














「っ!!」


バサリと掛けていた布団を取り払い勢いよく起き上がった。


窓から見える外は明るくて先ほどのことはただの夢だったと知った。


「ちっ、嫌な夢だ。」


そう呟いて、隣を見れば一緒に眠っていたはずのルークは居なかった。


「ルーク?・・・・どこに行った」


どうせ、トイレかなんかだと思うが何故か今日は焦ってしまう。

あんな夢を見たからか、こんなにも不安になるのは。


「情けねぇ・・・」


あんな夢くらいでこんなにも自分が翻弄されるなど・・・・・


だが、自分は何かを忘れているような気がする


フォニムの中で俺は何かを聞いたはずだ。



何かを・・・・・・・




カチャ、


あまり音を立てないように気を使った感じに戸が開いた。


そこから現れたのは自分が欲してやまなかった同じ顔の存在が居た。



「アッシュ、起き・・・・ぅわ」


近づきながら話すルークの言葉はアッシュによって抱きしめられる事で最後まで続かなかった。


「どこに行っていた。」

「早く目が覚めたから洗面に行ってたけど・・・・・アッシュ、なにかあった?」

「・・・・・居なくなるな」

「え?」

「勝手に消えんなよ」

「アッシュ・・・・心配した?」

「茶化すな。」

「だってこんなアッシュ珍しい」

「・・・・夢見が悪かっただけだ。」

「そっか。じゃぁ今は俺が居るからもう平気だろ?
さっき朝食の用意がもうすぐできるって言ってたからアッシュも顔洗って来いよ。俺ここで待ってるからさ」

「わかった、10分待ってろ。」



そう言ってアッシュは素肌の上に黒いシャツを羽織って部屋を出て行った。


それをルークは笑顔で見送った後、扉が閉まる瞬間その背中へ誰にも聞こえないような大きさでに呟いた。




「ごめんね。アッシュ」










それは何に対しての謝罪だったのか。


今そのことを知っているのは本人と神と呼ばれる存在だけであった。


兆しはあった。



光が闇へ飲まれ始める兆しは。







To be continued......








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というわけで、初、長編アシュルク物語です。
ちゃんと完結できるかなぁ(不安)
一応設定を↓へ

@ルークはアッシュと共に帰ってきた。

A帰ってきたときルークもアッシュと回線を繋げれるようになっていた。

Bナタリアとの婚約は破棄されていて仲間たちは皆2人の関係を知っている。

C2人は旅の途中からもう愛し合ってる

D今はレプリカとは呼ばない(屑はたまにある)

以上です。多分話の途中で他にもゴロゴロ出てくると思いますが読者様に理解いただけるように
がんばります。


題名:Ghost Note(ゴーストノート)は音楽用語です。

意味: 実際に演奏はしてないのに演奏しているように聞こえる音の事。
     俗に『音を飲む』という風に表現されている。