さらさら・・・・
さらさら・・・・
さぁ、少しずつ音が澄んできましたよ・・・・?
気づいてない訳ないでしょう?
知らない訳じゃないでしょう?
ほら、また・・・・・
音が聞こえる
砂の流れ落ちていく音です。
砂時計
「・・・・・・・・・・。」
「・・・・・終了です。」
「ん・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
普段の彼からは想像もつかないほどの静粛。
必要最低限の合図と相槌のみ。
私と彼、二人だけの空間はお互いが話さなければ無音のものとなる。
こうして、旅先での二人部屋を必ず一緒にするようになってどれ位経つだろう。
私たちの仲が急激に良くなったとか、そういうのではなく本当に必要だから行うようになった。
彼の体を少しでも知っておくために必要なこと。
音素乖離に関する定期健診。
それだけなら、適当にお互いの部屋にでも行けばいい話だろうが彼が望んだことを叶えるためにはこれが最善の方法だった。
「俺の体のこと誰にも知られたくない」と、そう言ったから。
確かに毎日互いの部屋を行き来していれば仲間のうち誰かしら不審に思うだろう。
ならば、初めから同じ部屋なら不審に思われることもないだろう。
そう思って『あの日』から彼と私の部屋はいつも一緒だ。
仲間たちには適当に言えばいい。(私に誤魔化せないわけがない)
それにはティアやミュウが協力してくれるから問題はない。
そう、そんなことは『問題』じゃない。
もっと深刻なことは・・・・・・
「・・・ド、・・・ジェイ・・・・・イ、ジェイド!」
「っ、あ・・・すみません。ぼーっとしてました。」
「大丈夫かよ?」
「ええ、平気です。・・・・というか、検診されている方が心配するのはおかしな話ですねぇ。」
「・・・・・・・。」
「ルーク?」
おかしい、普段の彼であるならば今のようにからかえば何かしら反応するはずなのに。
「心配して損した!」とか「からかうなよなっ!」。
どうしたのか・・・・。
「すみません、私もすぐに道具を片付けますからルークは先に寝ててもいいで・・・」
「もういいよ。」
「え?」
「もう、無理しなくてもいいよ。ジェイド・・・・」
「何を・・・・」
「知ってるんだよ?俺だって・・・・・。ジェイドが俺の為にグランコクマに来るたびに研究室で実験したり、
王宮の書庫から資料借りたりして、こうやって俺の体見た後に寝る間も惜しんで資料読み漁ってくれてるの。」
「・・・・・・・・。」
そう、彼の言うとおり必死で探した。
陛下に頼んで牢屋に居るあの鼻タレにも研究を手伝わせながら彼が助かる方法を探している。
けれど、何も見つからない。
何も・・・・・貴方を救う方法が見つからないんです。
「無理、してほしくないんだよ。俺」
掴めたと思った手掛かりでさえ、この手をすり抜けていく。
「こうやってさ、俺のために少しずつやつれていくお前見てるの嫌なんだ。」
もう何度、この必要なときに使えない頭脳を悔やんだことでしょう。
「自分の体のことだから・・・もう、限界なのはわかってるよ。」
それでも諦めきれないのはきっと・・・・・・・
「だから・・・・」
「嫌ですよ。」
「ジェイドっ!」
「お断りします!」
「なんで・・・・」
「大切なんです、貴方が。」
「え・・・」
「誰よりも何よりも、貴方が大切です。一度は死ねと言った私が何を言ってるんだとお思いでしょうが、
それでも私はっ・・・・・・ルーク、貴方を愛してるんです!」
「ジェイド」
ああ、なんて残酷な。
こんな風に彼から死を突き付けられなければ自分の気持ちに正直になれないなんて。
とんだ、愚かものですね。
しかも、彼の死に行く覚悟を揺るがすようなこんな告白の仕方をする私は本当に愚か者。
「何もできないかもしれません、でも何もしないのは嫌なんです。」
栄光の大地エルドランドが崩壊する。
彼は一人でローレライを解放する。
皆が彼と言葉を交わす。
そう、それは今生の別れのよう・・・・。
決してそんなことを認めたいわけではない。
けれども、人間は最悪の可能性の高さを知っている。
「ジェイド・・・・・」
「・・・・・・」
「ジェイド。」
「すみません、結局私は何もできませんでした。」
「貴方を救うことができなかった。」
「・・・・・・。」
「罵ってくださっても、ここで切り捨ててくださっても結構です。」
「俺は救われたよ。」
「何をっ!?私は貴方の乖離を止める方法を見つけるどころか、今この場で貴方を連れて行くこともできないんですよっ!!」
「・・・そうだけど、俺はこの手に救われてきた。」
彼は私の手を取り、頬に寄せる。
目を細めて慈愛に満ちた頬笑みで真っすぐな瞳で私を見る。
「確かに、この手の暖かさに安心させられたんだよ。」
「っ!」
光が見える
それと共に音がする
それは決して目の前の崩壊する大地の崩落音ではなくて
もっと静かで、確実な恐怖の音
さらさら・・・・
さらさら・・・・
最後の砂が落ちていく音。
砂は手をすり抜けて、
やっと掴めたわずかな砂ですら
あざ笑うかのようにその虚ろなる穴に吸い込まれて
『誰カ私ニ、罰ヲ下サイ。・・・・・罰ヲ恵ンデ下サイ。』
彼と共に朽ち果てることもなく今私は目の前の光を眺めている。
さらさら・・・・・さらさら・・・・・・
さらさら・・・・・さらさら・・・・・・
最後の砂まで落ちていった。
END
久々の更新でこんな暗いものを書いてしまってすみません!
けど、なんか書きたくなったというか凄いジェイルクが書いてみたくなったというか(所詮浮気性)
けど、自分的には好きな暗さです。
よくやったぜ!自分!!(開き直り)